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人間と鉄道

   

  車掌さん大活躍 (九十九里鉄道)


 単端式レールバスは逆転機がなく運転台が一方にしかないので、終点で向きを変えなければなりません。九十九里鉄道は、その操作を若い車掌さんが運転手と一緒にやっていることで有名でした。
 東金と上総片貝間わずか8.6kmを結んでいたこの鉄道では、片道30分位で終点に着いてしまうため、けっこう忙しかったのではないかと思います。
 上総片貝では、転車台が車庫と民家に接近した場所にあり、乗せ方が悪いと転向しているときに建物の一部に接触して壊してしまうので、車輌の方(エンジンの脇のフレーム)を削ったという話があるくらい、狭いところで向きを変えていました。左の写真でわかるように、たしかにエンジン部分のフレーム巾は、車体巾に比べてかなり小さくなっています。

 人力で向きを変えた後は、気動車を先頭につなぎかえるため、側線を通って駅の反対側に進み、客車や貨車と連結し直します。車掌さんは走ってポイントを換えに行かねばなりません(写真下)。
 編成作業が終わると、ジョウロに水を汲んできて、ラジエーターに給水です。どうやら、レールに足を乗せてちょっと背伸びしないと届かないようですね。

この日の東金行きは、キハ104+ケハフ301+ケワ1両の編成

 編成を終えてホームに戻ると、今度は清掃。ホームを掃いて、窓を拭いて、車内の座席も雑巾がけ。そのうえ、出発時刻が近づくと、改札の仕事まで受け持ちます。
 こんなに忙しく立ち働かねばならないけれども、この時代のバスと同様に、車掌さんは花形だったようです。若い女性が溌剌と仕事をしているところは、下の世代の少女たちにとっても「憧れの姿」だったのではないでしょうか。

 最近では大手私鉄にも女性の車掌が増えていますが、長いこと鉄道業界は売り子やウェイトレスを除くと、もっぱら「男の職場」でした。でも、1960年代の軽便鉄道には、この九十九里鉄道や頸城鉄道、北海道の簡易軌道のように、若い女性の車掌さんが活躍していたところがあったのです。
 単端式の気動車と女子車掌。もし、今こんな鉄道が残っていたら、人気沸騰まちがいなしですね。

すべて上総片貝駅 1959年5月 撮影=柳一世

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